研究概要 |
概略 平成17年度は、熱帯降雨観測衛星(TRMM)降雨レーダー(PR)と雷センサー(LIS)データを用い、降雨:発雷比(RTR, Rain-Thunderstorm Ratio)の値が降雨特性を表す新たな指標となることを示した。さらに、熱帯季節内振動(MJO)や台風における降雨特性とRTRを解析し、これを論文にした。また熱帯海上の高層観測データから大気成層構造と対流との関係を求め、論文にした。一方、TRMMのマイクロ波放射計(TMI)の85GHzと37GHzの2周波偏光補正済み輝度温度(PCT)を用いた降雨量推定法を作成した。主な結果を以下に示す。 (1)RTRの季節別全球マップを作成し、降雨特性を調べた。RTRは海陸差が顕著で、TRMM全域平均の海上では1.4x108kg/fl、陸上では4.2x107kg/flと、海上の値は陸上の3.5倍になる。但し、モンスーン最盛期や海洋大陸、北米南東海上など、海的な値を示す陸域や陸的な値を示す海域がある。RTR日変化は海陸共に朝6-9時に最大、夜間18-21時に最小となり、朝/晩の比は海上1.22、陸上2.36である。RTR全球マップを統計的に作成した研究はこれが最初である。 (2)モンスーン、MJO、台風の解析から、RTRは熱帯降雨の組織化の度合いを表すことを示した。通常の予想に反しMJOの対流活発期には雷活動が低くRTRが大きかった。また、強い台風はRTRが2桁大きく、非常に組織化されていることを示す。 (3)熱帯海上の高層観測データを使って大気成層と積雲対流活動との関係を解析し論文にした。 (4)従来の高周波(85GHz)PCTによる推定法の過大評価を改善するため、85と37GHzの2周波PCTを用いた推定法を作成した。その結果、従来手法にみられた背の高い降水の過大評価が緩和され、放射+散乱手法のばらつきも減少した。
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