研究概要 |
1.数値モデリングによる海水交換過程の評価 黄海・東シナ海の現実的な地形、風応力、河川流量、そして黒潮や対馬暖流などの流入出条件を与えた数値モデリングの成果(Chang and Isobe,2003,Journal of Geophysical Research,108)を用いて、これの陸棚縁辺部の解像度を上げたone-wayネスティングモデルを構築した。オリジナルの約1/12度程度の解像度を、1/18度程度に上げることで、黒潮縁辺部に現実的な前線渦を再現した。モデルの前線渦周辺では、既存観測データに見られるような低塩分陸棚水の中層貫入を表現することもできた。基本的には傾圧不安波の構造をもつ黒潮前線渦が、波の谷(陸棚系水が沖合に張り出した海域)に陸棚系水の中層貫入を伴いやすいことを、モデルの結果を解析することで示した。これらの成果を取りまとめた論文は、既にJournal of Oceanographyに受理(別添リスト参照)されており、平成16年度中には印刷物となる予定。 2.運動量交換過程の2層モデルによるアイデア提起 陸棚縁に沿って黒潮などの西岸境界流が与えられた場合に、陸棚上に平均流が励起されるメカニズムを、2層数値モデルによって検討した。特に、西岸流に伴う前線渦(波動)によって、平均流が駆動されていく過程に注目した。モデルの中で、前線波動が生成消滅を繰り返す平衡状態が達成されると、陸棚上には順流(西岸流の向き)と逆流が交互に帯状に並ぶ平均流構造が得られる。前年渦が成長・崩壊する過程で鉛直方向に運動量を輸送する拡散性伸縮効果と、この効果によって励起された地形性ロスビー波が共鳴相互座用によって帯状平均流を形成するという、いわゆるRhines効果との組み合わせによって、陸棚上で帯状平均流が形成される。以上の結果を論文に取りまとめ、Journal of Physical Oceanographyに投稿中である。 3.東シナ海の大陸棚上でのADCP観測 直接測流データの限られている東シナ海の陸棚上で、特に2のメカニズムによる平均流の帯状構造を確認するべく、ADCP観測を実施した。平成15年5月に実施した本観測のデータは、現在解析中である。
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