研究概要 |
1.数値モデリングによる海水交換過程の評価 黄海・東シナ海の現実的な諸条件を与え、特に陸棚縁辺部の解像度を上げた数値モデリングを構築した。そして、モデルの前線渦周辺で、既存観測データに見られるような低塩分陸棚水の中層貫入を再現した。春季には長江起源水が、海面に露頭する黒潮の水温躍層周辺から等密度面に流入する。その後、長江起源水は等密度線に沿って輸送され、これが黒潮中層の低塩分水塊になることを、既存の観測データの解析により明らかにした。これらの成果をIsobe et al.(2004,Journal of Oceanography,60,853-863)に発表した。 2.運動量交換過程の2層モデルによる評価 陸棚縁に沿って黒潮などの西岸境界流を与えた場合に、西岸流に伴う前線渦(波動)によって、陸棚上に平均流が駆動されていく過程を二層数値モデルによって示した。前線波動を再現したモデルが平衡状態になるにしたがって、陸棚上には順流(西岸流の向き)と逆流が交互に帯状に並ぶ平均流構造が現れる。このような平均流の形成メカニズムを、前線波動による拡散性伸縮効果と、地形性ロスビー波の共鳴相互作用との組み合わせによって説明した。また、平均流の地形勾配による依存性や、一連のプロセスに伴う熱輸送を明らかにした。これらの成果をIsobe(2004,Journal of Physical Oceanography,34,1839-1855)に発表した。 3.東シナ海の大陸棚上での平均流検出 特に2つのメカニズムによる平均流の帯状構造を、黄海・東シナ海で確認する。数値モデルで当海域の潮汐・潮流を精度よく再現し、これを用いて前年に実施したADCP観測結果から潮流を除去できることを確かめた。この潮流除去の手法を、既存の流速データセットに適用し、平均流を抽出することを試みている。
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