研究課題/領域番号 |
15540422
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
千手 智晴 九州大学, 応用力学研究所, 助教授 (60335982)
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研究分担者 |
森本 昭彦 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助教授 (80301323)
鬼塚 剛 独立行政法人水産大学校, 水産情報経営学科, 助手
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キーワード | 長江 / 対馬海峡 / 日本海 / 塩分変動 / 淡水輸送 / 日本海中層水 / 熱塩循環 |
研究概要 |
最大の淡水源である長江の流量変動の特性を調べるとともに、流域の3地点(宣昌、武漢、南京)における月別積算降水量資料について重回帰分析を行い、これら降水量資料から長江流量を推定する方法について検討した。このような推定を行う必要性に迫られたのは、1991年以降の長江流量が公開されていないからであるが、降水量偏差を説明変数とする重回帰モデルを考案した結果、4,500m^3/s程度の誤差で流出を推定することが可能となった。 対馬海峡の塩分変動について、長江流量との関連を調査した。解析したのは、福岡県水産海洋センターと韓国水産科学院が1982〜2000年に観測した各層塩分資料である。これらについて、結合経験的直交関数解析を行った結果、第1モードとして海峡全域で一斉に塩分が上昇・下降する変動が抽出された。このモードは対馬海峡の全塩分変動の約45%を説明するが、東水道で振幅が大きく、さらにその時間変動には長江流量との間に有意な相関があることが示された。以上より、長江流量が大きな年の夏季には対馬海峡全体で塩分が低下する傾向があり、さらにこのような年には、普段は西水道を通過している低塩分水が東水道にも波及することが明らかとなった。 以上の成果の一部は、日本海洋学会平成16年度秋季大会、およびthe 2^<nd> International Symposium on PEACE(Program of the East Asian Cooperative Experiments)において発表され、さらに日本海洋学会平成17年度春季大会においても公表する予定である。 より詳細な淡水輸送の実態を把握するために、対馬海峡下関市沖の蓋井島の定置網に水温・塩分計を設置し、表層水温・塩分を30分毎に測定した。測器は平成16年4月16日に設置し、平成17年2月24日に回収したが、測定結果は概ね良好で、ノイズの少ない資料が得られた。詳しい解析はまだ行っていないが、塩分は8月に極小値を示し、かつ水温変動との間に明瞭な相関をもつ7〜10日周期の変動が認められた。 なお現在、日本海内部での低塩分水の広がりと中層以深の水塊への影響を調べるため、研究分担者の森本が中心となって、既往の観測資料を統合したデータベースを作成中である。
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