研究概要 |
本研究では、回転円筒水槽の下層に南北の温度差に当たる半径方向の温度差を与えて対流圏波動に当たる傾圧波動を生成し、表面を暖めて上層に成層圏に当たる安定成層を作り、波動流の上方への伝播を調べた。我々は、円筒水槽(水深13cm、半径8.5cm)の底の厚さ3cmの層で波動流を生成し、底から4cm以上の上層は温度がほぼ線形に上昇する安定成層を作ることに成功し、これまでに、(1)波動流の上方への渦度の浸透は指数的に減少し、減少の割合が準地衡流的渦度方程式からの予測と良く一致すること(Exp.Fluids,2003)、(2)上層の成層では、温度は、子午面循環のために、下層の傾圧層に加えた半径方向温度勾配とは反対に、水平に見ると水槽の内側が高く外側が低くなっていて、回転方向の流速が半径方向の温度勾配による温度風の関係で決定されていること、成層の度合い(表面温度)が低くなると、安定した傾圧波動ができにくくなる等の結果を発見した(Exp.Fluids、2005)。 実際の対流圏波動は、ベータ効果(コリオリ力の緯度変化)を受けている。ベータ効果は、波動のドリフト回転を遅くし、プラネタリー波を上方へ伝播させる働きをする。(3)円筒水槽の底に円錐形傾斜を入れて地形型ベータ効果を導入した実験を行い、波数2の波動は傾斜が0.4以上で準地衡風的渦度方程式に従い上方に伝播し、ドリフト回転が遅くなることを発見した。しかし、臨界点近くでは、渦度はほぼ一定値を取り、準地衡流的渦度方程式には従わないこと、また、理論的には臨界点の高さは一定と仮定されているが、波数に依存していることが分かった。これらの結果をまとめた論文は、Exp.Fluidsで出版される。本研究では、グルノーブルのLEGI/CORIOLIS研究所およびパリのEcole Polytechnique Laboratorie d'Hydrodynamiqueを訪問し、実験および講演をして、回転円筒水槽実験について理論的および技術面で有益な成果を得た。特に、サブピクセルで解析可能なPIV技術を習得したことは、本研究の解析に大いに役立った。
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