研究課題
磁気圏境界とは、流れていない磁気圏プラズマと太陽から吹き出している太陽風プラズマが接する境界層であり、それは速度勾配層であると同時に、密度勾配層であり、電流層でもある。速度勾配のため、この境界ではケルビン・ヘルムホルツ不安定が励起されることが期待され、さらにその非線形発展にともなって境界をまたいだプラズマ輸送が発生することが期待される。しかし、輸送のためには、渦運動そのものを支配するMHD的ダイナミクスとなんらかの理由で発動する非MHDダイナミクスの結合が起きねばならず、その結合様式の理解と「実存証明」はなされていない。本研究では、渦が巻き上がった状態では、その内部で小スケールの電流層が形成されること、そして、そこでは非MHDダイナミクスの発動が期待できることに着目した。具体的には(1)渦が発達して磁力線を巻き込むプロセスを、電子慣性効果(非MHD効果)を含む二流体方程式系で数値実験した。その結果、渦内部では磁気リコネクションが発生し、それにともなって境界層をまたがったプラズマ輸送が発生することがわかった。(2)数値実験において得られる巻き上がった渦構造の解析を行う中から、巻き上がった渦を衛星観測データの中に同定するスキームを見出した。そして、それをジオテイル衛星データに適用したところ、巻き上がった渦は太陽風磁場が北向きの期間中に限ればそれほど稀な現象ではないこと、巻き上がった渦は常に境界層をまたがったプラズマ輸送を伴っていること、合わせて、巻き上がったケルビン・ヘルムホルツ渦による太陽風プラズマの磁気圏内への輸送は、太陽風磁場北向き時における主要な磁気圏形成過程の一つと結論されること、がわかった。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (5件)
Frontiers in Magnetospheric Plasma Physics, COSPAR Colloquia Series Vol.16
Geophys.Res.Lett. 32
ページ: L12507
ページ: L17101
ページ: L21102