研究概要 |
磁気圏・電離圏における重要な領域であるカスプ領域は,イメージ衛星の低エネルギー中性粒子撮像観測器(LENA)によってリモートセンシングが可能である.本年度は,カスプ領域のプラズマダイナミクスの特性を明らかにするため,LENAのデータの統計解析を進めるとともに,他の種々観測手段との同時観測イベントの詳細な解析を行った.その結果として,まず統計解析から,カスプのリモートセンシングが可能となる太陽風条件は13ナノパスカル以上であるという結果を得た.このような動圧が比較的高い状況では電離圏カスプに光るプロトンオーロラの同定が容易である.このオーロラ現象との同時観測イベントにおいて,LENAのエミッション分布の動きがオーロラの動きと高い相関をもつことを見出した.また,この相関が一時的に低くなるのは,太陽風の衝撃波が磁気圏に衝突した直後,すなわち地磁気に見られるSCの直後であり,その状況の理解にはカスプの低緯度側のマグネトポーズに起因する別の要因を考える必要があることもわかった.これにより来年度に向けた研究の発展のための重要な視点を得た.さらに,地上のスーパーダーンレーダーによる同時観測からは,カスプの極側のマグネットポーズで生じているリコネクションによるプラズマフローもLENAによってモニター可能であることを明らかにした.さらに,この妥当性について,3次元MHDシミュレーションコードを開発している研究者から受けたシミュレーションデータをもとに中性粒子のフラックスを計算することにより定量的に確認した.これらの結果に加えて,マグネトポーズの様々な場所で発生し移動していくフラックス・トランスファー・イベントがLENAで観測できる可能性があることなども明らかになった.
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