研究概要 |
磁気圏のカスプ領域に流入する磁気シースのイオンがジオコロナと電荷交換を起こし中性水素粒子を生成する時,イメージ衛星の低エネルギー中性粒子撮像観測器(LENA)により,そのカスプ領域のリモートセンシングが可能になる.研究代表者によって本研究期間の前年になされたこの提案に基づき,本研究ではまず,観測に期待されるプロファイルを準定量的なモデルを用いて求め,実際のLENAデータと比較した.その結果,高緯度シース方向を向いているLENAのスピンアングル数10度に広がるエミッションがカスプを観測していることがわかった.次に,この結果を,電離圏カスプを観測する地上のスーパーダーンレーダーとイメージ衛星との同時観測イベントの解析によって裏付けた.また,「その場」観測の衛星であるポーラー衛星とイメージ衛星との貴重な同時観測イベントを見出して,詳細な解析を行った.その解析から,LENAによって観測されるエミッションには,カスプの窪みからと考えられる安定したエミッションに加え,その低緯度側に点滅するように現れるエミッションも含まれていることがわかった.後者のエミッションは,カスプから磁気圏の中に入って電離圏へと向かうイオンが電荷交換して作られた中性粒子によるものであると解釈した.さらに,太陽風の磁場が北向きになると,通常よりも高緯度側からエミッションが到来することも見出した.地上のレーダーとの同時観測により,このエミッシヨンはカスプの極側境界で生じているリコネクションによるイオンの流入が原因であり,従ってLENAはリコネクション領域をリモートセンシングできることが明らかになった.カスプのリコネクション領域の場所が数分のスケールで揺らいでいること,また8地球半径の球面で見積もるとその動きが10分間にX軸方向で1地球半径程度になることもわかった.
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