太陽風中MHD(磁気流体)乱流を構成する大振幅MHD波動の位相相関について、Geotail衛星データの解析および計算機実験により議論を行い、位相相関を定量的に評価し、さらに位相相関の起源を明らかにすることが、本研究課題の目的である。この方向に沿って、今年度は以下の各項目について研究を進展させた。 1.位相相関を評価する手法の開発・整備:与えられた時系列データから、異なる位相分布を持つ2つのサロゲートデータを作り、これらの構造関数から位相相関を求める手法を開発・整備した。この手法の誤差、必要なデータ数などの統計評価を行った。 2。ウェーブレット・フィルターによる方法:ウェーブレット変換を用いて時系列データにフィルター処理を行い、位相相関を形成する波動が主としてどの周波数帯のモード間結合によるものかを明らかにするための手法を開発した。 3。計算機実験による位相相関の起源と時間発展の議論:励起源と減衰項を持つアルフヴェン系(DNLS系)を用いた計算機実験により、MHD波動が励起・増幅され、波動間相互作用のもとに非線形発展する過程に伴う位相相関の時間発展を計算した。また上で開発したウェーブレットフィルターによる手法を用いて、MHD波動間に生じている位相相関の起源を求めた。 4。多次元時系列データへの適用方法の開発:計算機実験により得られるデータを解析する場合などのために、データが2次元以上の場合に位相相関を求める手法を開発し、簡単なモデル乱流に対して、この手法の有効性を確認した。
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