青森県南津軽郡大鰐町の2ヶ所(鯖石と森山)において、堆積岩中の有機物の含有量・組成・熟成度及び珪酸鉱物に対する接触変成作用の影響を調べた。右機物の含有量・組成・熟成度全てにおいて、岩脈に近いほど接触変成作用による有機熟成が進行し、熱の影響を強く受けている。 一般の傾向とはずれ、鯖石の岩脈からの距離が1.5〜0.0mの試料で、岩脈に近づくにつれて有機炭素および不定形質ケロジェンの割合が増加するのは、有機物が高圧下で加熱され、一度発生した液体成分が散逸せずに、ケロジェンと再結合してコークス状物質を形成したことが原因であると推定される。 ビトリナイト反射率(R_0)対統計的熱変質指標(stTAI)ダイアグラムでは、接触変成作用による有機熟成は、続成作用による有機熟成経路とは異なる経路で進行する。この熟成経路の相違は、続成作用と接触変成作用における時間と温度のスケールの相違、およびR_0がstTAIよりも温度に対して敏感であることにより生じると推定される。 自生の珪酸鉱物の変化を調べると、鯖石では全ての試料で石英、森山では全ての試料でオパールCTとなり、オパールCTの(101)面間隔も変化しておらず、接触変成作用による影響は認められない。鯖石と森山の試料全体を珪酸鉱物で比較すると、鯖石は石英帯、森山はオパールCT帯を示し、前者がより深く埋没していたと考えられ、鯖石の岩脈付近が高圧下にさらされていたという推定を支持する。 接触変成作用の影響を取り除くと、両地域は、有機熟成ではほぼ同じ段階を示すが、珪酸鉱物では鯖石が森山より高い埋没続成段階を示している。黒石断層および三ツ目内断層を境にして森山側の地層が鯖石側の地層より330m沈降していることから、有機物は断層活動後の、珪酸鉱物は断層活動前の埋没続成段階を示していると推定される。
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