研究概要 |
本年度は,3本のボーリングを実施し,コア試料を解析した.このうち,2本は,新潟平野における縄文海進時に形成されたバリアーシステムの内側に位置するラグーン内における相対的海水準変動を検討するために,福島潟地域と岩船潟地域において掘削を行った. 福島潟地域では70m,岩船潟地域では30mのコア試料を得た.両コアともに両地域に分布する沖積層を掘りぬき,基本的な沖積層の層序が確立できる試料である.これらの試料は,半割後に堆積相の記載,写真撮影,ソフトX線写真の撮影,珪藻・マセラル・TOC・TS分析用試料の採取と分析を行った.これらの解析の結果,縄文海進に伴う海進はもとよりさらにそれ以降にも小規模な2-3回の海進を確認できた.特に両地域の縄文海進以降は,汽水成の潟が継続して維持されており,堆積相の解析では層相が一様なため相対的な海水準変動の読み取りが困難であるが,TOC,TS量の変化により汽水成の堆積環境においても相対的な海進(より強い海水の浸入)が捉えられたことは大きな成果である. また,1本は縄文海進以降の砂丘列部において30mの試料を掘削した.この試料の解析からは,砂丘列がバリアーシステムではなくデルタ(ストランドプレーン)システムの上に形成されていることが明らかになった.新潟平野の形成はこれまでバリアーシステムの前進による堆積作用が主体であると考えられてきたので大きな成果である. これらの成果を受けて次年度は,さらに2本のボーリングの掘削を予定している.また,より詳細なTOC,TS量の変化の解析を行う予定である.
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