研究概要 |
この2年間の研究において,次の3つの内容で成果を得た. (1)東北・関東中部地域における.火山フロントから背弧へ向かって,(1)急冷したスコリア・軽石を噴出し,(2)カンラン石斑晶をもたらした,(3)最も新しい時期の噴出物について,メルト包有物の記載岩石学的および化学的に調べてイオウ濃度データを得た.浅間火山については,現在進行中の2004年噴火の噴出物のメルト包有物データを得て,1783年の天明噴火に基本的に似たマグマが供給されたことを示すデータを得た. (2)この結果により,この地域の"メルト包有物のイオウ濃度マップ"をつくり,島弧の火山フロントから背弧火山へのマグマのイオウ供給量のプロファイルを検討するデータを蓄積した.一般に,フロント側の火山へ供給されるマフィックマグマは揮発性成分に富んでおり,イオウ供給量が大きい.背弧側の火山,とくに北アルプスの火山では,イオウ供給量が少ない.中部地域の活動的な火山について,今後の噴火活動によるイオウ放出を予測するために役立つメルト包有物のイオウ濃度データを補強してきた.これらを基礎にして,大気圏や地殻表層→海洋底スラブ→沈み込み帯→島弧火山→という"イオウのリサイクルの窓"としての日本の島弧火山の役割を定量的に検討するためのデータベースを新たに加えた. (3)メルト包有物の記載岩石学的研究方法を改善し,島弧の初生マグマのイオウ濃度を知る方法の精度を高めることに研究方法を工夫・改良してきた.
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