研究概要 |
本研究の目的を達成するため,本年は網走湖・能取湖・中海・宍道湖について水質・底質調査を行った.宍道湖・中海については,3回のルート調査,網走湖・能取湖については2回の調査を行った.本年4月は,中海で大規模な赤潮が発生し,中海表層水の懸濁態有機炭素量が増大した.そのような表層水塊が大橋川の底層部を遡上していることや,朝酌川から高懸濁物量の水塊が流出しているのが観測された.また,表層採泥の結果,湖底表層部は通常月より高い有機炭素濃度を示した.7月は,降水量の増加により,中海の表層水が宍道湖レベルの低塩分を示す現象がみられ,中海・宍道湖で普通に見られる2つの塩分躍層が1つになった.その塩分躍層では高クロロフィル量を示した.10月の調査では通常の状態にもどり,2つの躍層付近で高クロロフィル量を示した.網走湖では安定した塩分躍層が見られ,その境界において高クロロフィル量を示した.しかし,表層水全体が比較的高いクロロフィル量を示している.これは,昨年の調査では見られない現象で,表層水に分布する藍藻類と境界に分布する光合成バクテリアの競争関係を反映していると思われる.夏季の底層水は無酸素状態を示し,水塊的に安定していた.冬季の観測でも無酸素状態を示したが,明らかな高塩分水の流入が観測され,流向流速計の観測から潮汐に影響されていることが明らかとなった.能取湖は比較的酸化的な底質環境を示した.しかし,塩分躍層も顕著ではなく,高クロロフィル畳もそれとは無関係に形成されていた.
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