かねてより調査研究を進めていたインド、オリッサ州タルチール堆積盆のペルム-石炭系タルチール累層について、大規模洪水流による堆積作用のバックグラウンドを明らかにするため収集済みのデータを解析し、堆積盆の発達モデルを構築して専門誌であるGondwana Research誌に論文を公表した。タルチール累層の堆積は石炭紀末からペルム紀にかけてのゴンドワナ氷床の衰退と消滅を背景としているとみなされる。射流領域の大規模洪水流堆積物は堆積盆縁における急斜面性ファンデルタの形成と密接に関連していることが明らかとなった。氷河の衰退の初期段階で大量の粗粒物質が供給されて湖盆縁にファンデルタが形成され、その過程で氷河の崩壊や山間の氷河湖の決壊が頻繁におこり、高流速かつ浅水深の大規模なシート洪水流が頻発して、射流領域での堆積作用が起こったと考えられる。 白亜紀におけるゴンドワナ超大陸の分裂に関連して形成されたアトガー堆積盆において、盆縁の扇状地成堆積物中にシート洪水流による堆積物を認定した。このシート洪水流堆積物には常流域で形成される斜交層理がみられず、射流領域の堆積物である可能性が高い。今後の詳細な検討が必要である。この成果をも含めて、アトガー累層の堆積モデルと造構環境に関する論文をGondwana Research誌に公表した。 国内においては、福井県越前海岸地域の新第三系糸生累層と国見累層を対象に射流領域の堆積物の検討を行なった。糸生累層では火山砕屑岩層中に反砂堆起源とみなされる低角度斜交層理が見いだされた。火山噴出物の大量集積とその流動化によって射流領域の洪水流が発生したらしい。国見累層では扇状地縁辺堆積相として反砂堆起源の堆積物がみられる。これらは河川流路の側方規制を解かれて緩斜面上に溢出した、射流領域のシート洪水流による堆積物とみなされる。次年度に詳細な検討を予定している。
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