研究概要 |
これまで調査研究を進めていた福井県越前海岸地域の新第三系国見累層について,とくに射流領域の洪水流堆積物の堆積システムにおける位置づけについて検討を行なった。国見累層では扇状地成の上方粗粒化砂岩-礫岩層の最下部に射流領域の洪水流堆積物がよく発達する。これらの堆積物は厚さ数10cmオーダーの砂岩層で、薄い泥岩層と互層をなすことが多い。砂岩層には平行層理や反砂堆起源とみなされる低角度斜交層理がよく発達するが、トラフ型斜交層理や平板型斜交層理など常流領域のベッドフォーム起源の堆積構造はみられない。このことから、これらの砂岩層は流れの深さが浅く、流速の速い、シート洪水流によって堆積したと考えられる。扇状地成上方粗粒化シークェンスの下部に射流領域のシート洪水流堆積物が卓越することは、扇状地形成の最初期においては山間峡谷と山地縁の平地部との間で河床勾配の劇的な変化があり、洪水流が峡谷の側方規制を解かれることにより平地部に一気に面状に広がったためと考えられる。扇状地の成長とともに河床勾配の急変は徐々に緩和され、また扇状地面上に流路システムが構築されていくため、シート洪水流の発生頻度が低下していったのであろう。 国外の研究においては、かねてより調査研究を進めていたインド、オリッサ州の白亜紀アトガー累層の扇状地堆積物を検討した。アトガー累層には砂礫質のシート洪水流堆積物が存在することはすでに確認しており、その堆積メカニズムを精査した。その結果、流れの状態が常流・射流の両領域を繰り返しながら堆積していったらしいことが明らかになった。その意味合いについてはさらに検討が必要である。
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