研究概要 |
深海底の鉄・マンガンクラスト・団塊は,酸化物がゆっくりと沈積した化学堆積岩であることから,長レンジの海洋環境変化や地球規模でのイベントを記録していることが予想される.本研究では海底環境復元の大きな障害となっているmm精度の年代測定法の開発が大きな目標の一つである.初年度(平成15年)は,産業技術総合研究所と高知大学が所蔵する試料から,5〜10cmを超える厚いマンガンクラストを選定し,微細構造・鉱物組成・化学組成に基づく微細層序を記載することを基本として,それらの異なる採取地点の間での対比の可能性を指摘した.既に放射性同位体による推定年代が得られているサンプルについては同様の記載を行った上で2.5-3.0mm厚の切片を作成し,海底堆積物の残留磁化測定と同様の手法を用いた測定を実施中である. 次に,試料の断面の残留磁化を超伝導磁力計によって直接測定する方法の検証を行っている.測定はカリフォルニア工科大学の施設を使用するため,装備と運転スケジュールに依存するため時期を協議中である.しかし,サンプルの最適サイズ,処理法,固定法,研磨精度等の技術的問題について合意が得られ,既に測定用サンプルは完成した.概ね来年度の前半の実施を予定している.この方法によって残留磁化逆転境界を同定することが出来れば,高分解能(mm以下)での年代測定に大きく道が開けるとともに,様々な年代測定法の信頼性を評価することが出来る. さらに残留磁化による年代測定の信頼性を確保するためにクラスト中の磁性鉱物および残留磁化獲得機構についての理解を深める必要があり来年度の研究課題である. これらの成果は予備実験データが得られた段階で紙上公表する予定であるが,本研究の部は国際学会において2回の講演,1回のプロシーディングで既に発表した.(755字)
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