研究概要 |
海底の鉄・マンガンクラストおよび団塊は,長い地質時代にゆっくりと沈積した化学堆積岩である.鉱物資源として,また長レンジの古海洋環境の記録として注目されている.本研究では環復元の障害となっている高精度年代測定法の開発を大きな目標として,第2年度(平成16年)には,初年度に選定した北西及び南西太平洋の多様な地質環境の鉄・マンガンクラストについて,その微細組織や化学・鉱物組成分析を実施し,各試料の"微細層序"を記載し,時間的・空間的対比を試みた.本研究の残留磁化を用いた年代測定に先立ち,微細スケールの年代測定として既存の放射性同位体年代測定を実施し,幾つかの試料について,同位体法と残留磁化法による年代測定の結果を比較した.前者による絶対年代値は10%程度の系統的誤差が生じるものの概数としては信頼できる.一方,後者は時に非常に明解な地磁気反転のイベントが読み取れるものの絶対値をあたえるものではない.結果として,両者の併用によって,従来の年代値に比べ信頼性が大きく高まることがわかった.これらの年代値を適用して,遠隔地で採取された試料の間で微細層序の対比可能となり,クラストによる古海洋環境復元の展望が開けた. 次に,本年度は残留磁化獲得機構についての基礎的研究を実施した.磁性鉱物の選別・濃縮を試み,その多様な物性・性状を測定,観察した結果,磁化を担う鉱物に関して重要な情報が得られた.また超伝導磁力計SQUID(米国カリフォルニア工科大学)による高分解能磁化測定用の研磨試料が完成し,2005年度の測定計画が受入れられ,分析結果を待つ状況にある.来年度にその成果を公表予定である.以上の研究成果は順次紙上発表する予定であるが,予備的結果の一部は海外・国内の学会において4回の講演,5編の関連論文として既に発表した.
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