研究概要 |
本研究は,底生動物を補職する一部の魚類が,堆積物の攪拌作用にどのような影響を与えているのか,そして,そのような影響がいつ頃から出てきたのかを解明するとともに,それらが有する地質学的・古生物学的意義を論ずることを目的としている.2年目にあたる平成16年度は,地層に記録されている過去の魚類が摂食時に形成した構造,すなわち生痕化石の検討に主力を注いだ.調査した地層は,千葉県房総半島に分布する新第三系と第四系,宮崎県串間市都井岬に分布する古第三系,そして,沖縄県八重山郡与那国町に分布する新第三系である.研究代表者によるこれまでの研究によって,これらの地層には,エイ類の摂食活動によって形成された生痕化石Piscichnus waitemataが多産することが判っている.検討の結果,千葉県房総半島に分布する新第三系と第四系と沖縄県八重山郡与那国町に分布する新第三系においては,形態(サイズ)・産状に関する追加データが大量に得られた.また,宮崎県串間市都井岬に分布する古第三系においては,これまで本邦で未発見のPiscichnus waitemataを見いだすことができるとともに,その形態(サイズ)・産状に関するデータを新たに採取することができた.このデータは,エイ類の摂食行動の進化を検討・考察する上で,極めて重要な基礎データとなることは間違いない. なお,西表島において実施する予定であった現生エイ類の摂食痕に関する検討は,調査予定地である浦内川の橋梁工事に伴って,調査予定地に立ち入ることができなかったため,残念ながら実現しなかった.
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