研究課題
基盤研究(C)
これまで、エイ類の摂食行動によって形成された生痕化石Piscichnus waitemataの記録は、中生代白亜紀末期が最古であり、それ以降は主に浅海相から産出が報告されてきた。しかし、その産出報告は極めて断片的であった。本研究によって、これまで産出記録が無かった上部古第三系の浅海相からもこの生痕化石が確認されるとともに、中新世以降の全ての時代で産出が確認された。また、第四紀の深海堆積物からもこの生痕化石を発見した。これらの事実は、中生代白亜紀から新第三紀中盤にかけて浅海域に限って生息していたエイ類が、新第三紀後半になって深海にも生息場を拡大したことを示している。このようなエイ類の生息域の拡大は、エサとなる底生動物の生息場の深海への拡大現象と密接に関係しているものと推定される。生痕化石Piscichnus waitemataをつくるような摂食行動を採用する一部のエイ類は、口器から海水を海底面に噴射するという極めて特異な方法でエサとなる底生動物を探し捕食する。この摂食行動によって堆積物表層部は極めて短時間に、しかも大規模に激しく攪拌される。したがって、エイ類の生息場が時代とともに深海に拡大した結果、堆積物の攪拌現象、すなわちバイオターベーション(bioturbation)の程度と質も大きく変化してきたと言える。換言すれば、海成層における生物攪拌現象を議論する際には、エイ類の摂食様式と生息場が時代とともに深海へと拡大したことを考慮する必要がある。
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