研究概要 |
本年度は分析用研磨薄片の作成・岩石学的記載を行うとともに,構成鉱物の化学組成の検討に重点を置く計画であった.但し,LA-ICP-MSを利用し脈を構成する微細鉱物の分析を行う予定も含まれていたが,マシンタイムの都合により次年度に回すことになった.なお,本研究の検討対象はODP Leg 176(1997年),JAMSTEC-WHOIの3回の航海(1998年MODE 98 Leg 4,2000年KR00-06,2001-02年YK01-14)によって得られた試料である. 1 ガブロ類の記載岩石学的特徴 検討した岩相はかんらん石ガブロ・ガブロ,鉄酸化物ガブロノーライトなどであり,さらに同時に検討したドレライト中に捕獲岩としてトロクトライトを確認した. 2 鉱物の化学組成上での特徴と本年度の成果の現時点での意義 今回の検討において最もFeに富むかんらん石の組成は鉄酸化物ガブロノーライト中のMg#(=100^*Mg/[Mg+Fe])29.3であり,これはODP Leg 176掘削孔でこれまで報告されている最もFeに富むものに相当する.また最もMgに富むかんらん石は上記のドレライト中のトロクトライトに産するもので,Mg#は91.0であった.これまでにアトランティスバンクのガブロ類に知られていた最もMgに富むかんらん石のMg#は84程度であり,マントルのかんらん石組成(Mg#【greater than or equal】90)からMg#84までのかんらん石を含む集積岩が欠如していた.今回確認したトロクトライトはこの"missing cumulate"の最も未分化な部分に相当するものであり,南西インド洋海嶺におけるマントルと地殻におけるマグマ活動をつなぐ重要な試料の獲得に成功したことになる.
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