知床半島では、忠類層や越川層の堆積に前後して基盤の隆起が生じたとされる。 知床半島の応力場は後期中新世に伸張応力から圧縮応力に変化し、中新世末ないし鮮新世以降も水平圧縮の応力場が引き続いているとされる。 知床半島における新第三系中新統〜鮮新統は、下位から上位へ、忠類層、奥蘂別集塊岩層、越川層、幾品層および知布泊層から構成される。 斜里町日の出付近では越川層、宇登呂付近では遠音別川層と呼ばれる中部〜上部中新統はともに硬質頁岩を主体としている。それぞれの地層の上位には、日の出付近では幾品層、宇登呂付近では宇登呂層と呼ばれる上部中新統〜下部鮮新統が分布し、ともに安山岩質ハイアロクラスタイトからなる。 知床半島基部付近には、主に硬質頁岩と泥岩からなる越川層と、その上位に泥岩細粒砂岩互層からなる幾品層が重なる。斜里町奥蘂別川中流域の幾品層基底部から約75m上位に挟在する軽石凝灰岩のフィッショントラック年代値は5.1±0.4Maである。幾品層基底部の地質時代は5.1Maよりやや古く、5.5Ma前後であると考えられ、越川層と幾品層との不整合は5.5Maの低海水準期に形成された可能性があるとされる。 知床半島基部の茶志別川流域では、泥岩や砂質泥岩からなる幾品層の上位に細粒砂岩や凝灰質砂岩からなる陸志別層が整合漸移で重なる。両層の境界は3.8Ma前後の低海水準期に相当するとされる。また、斜里町日の出のり面では幾品層と知布泊層が整合に重なっている。ここでの幾品層は主に凝灰岩、軽石凝灰岩、泥岩など、知布泊層は主に礫岩、砂岩、凝灰岩、泥岩、頁岩などからなる。両層の大部分は、凝灰質泥質岩の鉱物組合せがオパール-スメクタイトで特徴づけられることから、続成変質帯のI帯に相当する。
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