研究概要 |
知床半島の地質は,広域地質構造上,千島弧内帯に属し,新第三系および第四系と新第三紀貫入岩類からなる。新第三系は,下位から上位へ,中部中新統忠類層および奥蘂別集塊岩層,中部〜上部中新統遠音別川層と,鮮新統宇登呂層に区分される.第四系は,更新統段丘堆積物および遠音別岳火山噴出物などの第四紀火山噴出物,更新統〜完新統崖錐堆積物および地すべり堆積物,完新統沖積層などからなる.貫入岩類は後期中新世〜鮮新世のドレライトおよび黒雲母デイサイト(K-Ar年代:3.98±0.14Ma)などからなる. 忠類層堆積時の火山活動は,前期が玄武岩質および安山岩質,後期が流紋岩質で,これらの火砕岩の多くがハイアロクラスタイトであることと,火砕物の水中での再堆積が顕著であることから,忠類層の火砕岩の多くは水中に堆積したと考えられている.この地層には,根室黒鉱鉱床が胚胎し,これらの海底火山-熱水系によって黒鉱型鉱化作用と熱水変質作用が見られる.また,この地層には銅鉛亜鉛鉱脈鉱床も胚胎している. 奥蘂別集塊岩層は玄武岩質〜デイサイト質溶岩および火砕岩を主とし,その火砕岩はハイアロクラスタイトを主体とする. 遠音別川層は珪質頁岩を主体とし,酸性凝灰岩や砂岩をはさむ.この地層には,しばしばドレライトが岩脈またはシート状に貫入している.このドレライト中にパイライト-石英平行脈群が見られる. 宇登呂層は主に玄武岩質ハイアロクラスタイトからなる.この地層中に石英網状脈とスメクタイトで特徴づけられる熱水変質帯が見られる. 第四紀火山の中でも,比較的解析が進んでいる古い火山と考えられる武佐岳の溶岩の年代値(50万年前:後藤,1989)から,約50万年前から安山岩質陸上火山活動が始まったと考えられ,これらの陸上火山-熱水系によって熱水変質帯が形成されている.
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