研究概要 |
これまで、DIA型と呼ばれる高温高圧実験装置による放射光実験の定常的な圧力発生限界は、約15GPaであり、それ以上の高圧条件発生は、実験の成功率が極端に低下して、再現性のある実験を行うのは難しい状況にあった。そこで、従来の実験技術の問題点を洗い出し、次にアンビルの素材としての焼結ダイヤモンドを数種類比較し、さらに加圧および減圧速度等の最適化を行う事で、定常的に17GPaまでの加圧実験を可能にした。この実験技術の改良により、17GPa、900℃までの温度圧力条件における再現性のある実験が可能となった。 そこで、この実験を技術を用い、硫黄の高温高圧下における相平衡実験が可能となり、常圧相と液相および3種類の高圧相の安定域を確定できた。また、従来、不明な点が多かった高圧相3が、そでに報告されている室温誘起の正方晶の高圧相と同じもであることが明らかになった。これらの結果と,すでに明かとなっている常圧相と高圧相1および2の結晶構造とを考えあわせると、硫黄は、圧力上昇と共に、環状分子構造と螺旋鎖状構造が交互にあらわれるといった特異的な挙動を示すことが明かとなった。今回の結果は、各構造相転移において、必ず硫黄の開環および閉環反応が起こる必要があることを意味している。これは、15GPaまでの相転移が必ず300℃以上の高温条件が必須である事と調和的である。 また、今回の実験技術の改良で、常圧相および3種類の室温における圧縮挙動を15GPaまで調べることが可能になった。その結果、すでに明らかになっていた高圧相2の異方的な圧縮挙動が、特異的な現象であることが明らかになった。
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