研究概要 |
1.滋賀県土倉鉱床の鉱石や岩石について,EPMAによる閃亜鉛鉱の分析,及び全岩(塩基性岩,砂岩)のREEのICPによる分析を更に行った。黄鉄鉱に包有される閃亜鉛鉱と粒間の閃亜鉛鉱でFeS含有量に違いがあることが明きらかになった。粒間の閃亜鉛鉱は続成作用の過程で硫黄分圧が上昇するような変化を受けたこと,及び包有物として産出する閃亜鉛鉱は続成変化を免れたと解釈される。黄鉄鉱中の包有鉱物の種類と組成は,熱水条件を反映している可能性が高い。 2.高知県名野川鉱床の直接約な下盤を構成するチャートは,特徴的にスティルプノメレーンを含み,化学組成上はFe, Mnを多く含む。三波川変成帯で,Mnを含む赤鉄鉱や紅簾石を有する珪質片岩は名野川鉱床のチャートに化学組成上類似し,熱水起源である可能性が強い。 3.沖縄トラフの活動的なチムニーから錫を含む黄銅鉱,プラチナを含む輝蒼塩鉱がEPMAによって見出された。熱水活動は酸性火山活動に伴っているが,プラチナを著量含む鉱物が塊状硫化物鉱床や海底熱水性鉱床から発見されることは極め亡稀である。プラチナの起源と濃集について鉱床成因について有意な私指示元素になり得るか,検討を続ける。 4.鉱石中の鉛含有量や鉛の同位体組成は鉱床の形成場を探る重要な指示元素である。顕微鏡的には極めて見出すことが困難である極く微細な方鉛鉱粒子の含有量の概数をEPMAの反射電子線像を用い推定した。その結果,100ppm以下の濃度の鉛は塊状硫化物鉱床では微細方鉛鉱として存在し,それは反射電子線像で比較的容易に検出できることが判明した。日立鉱床の鉱石は三波川帯中の鉱石に比較して明瞭に多くの方鉛鉱を含む。
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