研究課題
鹿児島県内の多くのシラス崖の表面からシラス試料を採取し、どのような粘土鉱物が生成しているかを調べた。その結果、比較的最近崖が崩れた場所での崩落したシラス中の粘土鉱物はスメクタイトと10Å-ハロイサイトが認められ、その含有量は、崩落しないで残っている崖の部に含まれている粘土鉱物の含有量に比べてはるかに多量であることがわかった。出水市の針原地区で大規模な地すべりが起こったが、この地域から採取した土砂中にも多量の10Å-ハロイサイトが含まれていた。また、最近大規模な地すべりを起こした鹿児島県吾平町で採取した土砂中にも多量の10Å-ハロイサイトが含まれていた。このように崖崩れを起こした土砂中には膨潤性粘土鉱物が例外なく含まれていた。このことは、多くの雨が降った後、膨潤性粘土鉱物の層間に水が入り、粘土鉱物が膨潤したためにそれまで土砂中の粒子と粒子がくっついていたものがはがされ、土砂中に割れ目が生じると同時に水を含んだために重量が増し、崖の崩壊が起こったものと思われる。大分県湯布院花合野では大規模な温泉地すべりがみられるが、この地域の土砂中にはスメクタイトが多く含まれていた。このスメクタイトも膨潤性粘土鉱物であり、この粘土鉱物が地すべりを起こしている要因になっていることがわかる。以上のように膨潤性粘土鉱物の存在が地すべりや崖崩壊の原因になることがわかったので、天然のシラスを出発物質にして、シラスからどのようにして膨潤性粘土鉱物が生成するのかを調べるために、合成実験を行った。天然でシラス崖の表面に生成している膨潤性粘土鉱物は、それほど温度も高くなく、大気圧下で生成しているので、低温低圧の条件下での合成実験を試みた。その結果、200℃以下での水熱条件下でスメクタイトの合成に成功したし、大気圧下でのスメクタイトの合成にも成功した。今後この実験を継続して行っていくと同時に、シラスの崖崩壊を起こすのは、どのくらいの膨潤性粘土鉱物が含まれていると危ないかを予知できるように、膨潤性粘土鉱物の含有量と崖崩壊の関係をさらに詳細に検討する予定である。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
粘土科学 44巻・1号
ページ: 1-11
Water-Roch Interaction (Wanty & Seal II (eds))(Taylor & Francis Group, London)
ページ: 1305-1308