未分化隕石(=コンドライト隕石)と分化隕石(および惑星など)の関連を希ガス同位体研究の立場から明らかにしたいと考え研究を進めた。分析対象として、オーブライト隕石、アングライト隕石、ブラチナイト隕石、月隕石(以上はいずれも分化隕石)、およびコンドライト隕石を選び、本年度それぞれについて1個〜5個程度の試料について希ガス同位体分析を行った。特にオーブライト隕石には唯一共通の酸素同位体を示す未分化隕石(エンスタタイトコンドライト)が存在しているため、より詳しく研究を進めた(多くの隕石を入手し希ガス分析を行った、くり返し分析や段階加熱法による分析を行った、いくつかについては酸素同位体分析も行った、等)。現在までに得られている結果では、オーブライトがエンスタタイトコンドライトそのものから分化したことを直接に示唆する特徴はほとんど観察されず、コンドライト的希ガス成分を含むオーブライトが複数存在するが1つを除いてそれらは外来由来(オーブライトの母天体表面にコンドライト片が衝突してもたらされた)と考えられる。しかし1つについてはコンドライト的な始源希ガス成分を多量に含んでいることから形成時の成分を残しているものと考えられ、それはコンドライトの中でもエンスタタイトコンドライトの希ガス組成に近い。また、約半数のオーブライトで^<244>Pu起源Xeが見られ45.6億年付近の形成年代(おそらく分化年代)を示すこと、宇宙線照射年代はエコンドライトの中で最も長い年代を持つような分布を示すこと(エンスタタイトコンドライトの分布とは全く異なる)、などが明らかになった。オーブライト隕石に関する結果について現在論文作成中である。他の隕石に関しては現在も継続して解析を行っているものもあるが成果の一部は国内・国際学会にて発表を行った。また、微小試料溶融のためのヒーターシステムを作成したのでその応用・評価を進めている。
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