分化天体(=分化隕石や惑星)を作るもととなった物質として未分化隕石(=コンドライト)が考えらるが、その詳細は必ずしも解明されていない。本研究では、コンドライトと分化隕石の関連について希ガス同位体研究の立場から制約を与えたいと考え研究を進めた。この目的のために、いくつかの分化隕石(オーブライト、アングライト、ブラチナイト、月隕石)とコンドライトの希ガス同位体分析を進めた。特に以下の2つ題材について詳細に研究を行った。 (1)オーブライト隕石の起源:オーブライト(還元的分化隕石)の酸素同位体組成はエンスタタイト・コンドライト(還元的未分化隕石)と一致するため両者の関係は興味深い。両隕石の比較、およびオーブライトの起源や進化の解明を試みた。主な結果は、(i)一部のオーブライトにはコンドライトに見られる始源的希ガス成分が含まれていた。しかしそれはオーブライト母天体に衝突したコンドライト物質からもたらされたものと推測される。(ii)-<244>Pu核分裂起源Xeの存在が確認された。Pu/U比はコンドライトや他の分化阻石が示す値の範囲内であり、太陽系形成後数千万年以内に分化が起こったと思われる。(iii)宇宙線照射年代分布はオーブライトとエンスタタイト・コンドライトでは大きく違っており、両者の母天体は近い領域には存在していないと思われる。 (2)普通コンドライト隕石中の始源的希ガス成分:「普通コンドライトの始源的希ガス成分=Q成分」と考えられてきたが、Q成分以外の成分があることがわかってきた。その成分は、軽希ガスに富む(Qに比べAr/xeやKr/xe比が高い)、放出温度が低い(1100℃⇔Q成分は1300℃)、希塩酸処理により失われる(Qは失われない)、同位体組成はQ成分と類似する、という特徴を示している。 また、本研究ではミリグラム程度の試料を溶融するのに有用なヒーターシステムを設計・作成した。
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