研究概要 |
本年度はICP質量分析計による高感度、高精度の白金族元素(PGE)定量に関する基礎的な検討を行った。検討の際に用いた試料は地質調査総合センターから配布されている標準岩石試料JP-1である。この試料はほぼ全てのPGEの濃度が1ppb以上と、地球上の試料としては比較的高濃度のものである。 試料からのPGEの濃縮には、ファイアーアッセー法を用いた。具体的には磁性ルツボの中に粉末状の試料、ニッケル、硫黄を入れよく混ぜ、さらにRh以外のPGEの安定同位体濃縮スパイクを加える(Rhのみ単核種元素)。これを電気炉の中で溶融し、硫化ニッケル(NiS)を作りその中にPGEを濃縮させる。このNiSからPGEを分離しICP質量分析計で定量を行う。このファイアーアッセー法自体は古典的な手法であるが、本研究室では従来法に工夫を加え回収率の向上を実現した。又、この手法では溶融中PGEの中で特に揮発性が高いオスミウム(Os)は通常の条件では全て散逸するので、加熱する温度をやや低めに設定した。その結果、依然としOsは散逸するものの同位体希釈法によって十分定量を行い得ることが分かった。又、スパイクを加えたOs以外の元素(Ir, Ru, Pd, Pt)はいずれも回収率はほぼ同じとなった。これは、Rhの回収率も他の4つのPGEの回収率と同一とみなせることを示し、実際他のPGEの回収率を用い定量値を求めた。 JP-1の繰り返し測定を行なった結果、全ての元素において13-25%の範囲でデータは一致した。Irについてはpreferable valueとして知られている値に比べ高い値となった。これはPGEパターン等を考慮すると、汚染等によって値が高くなったというよりはむしろpreferable valueに問題がある可能性を示している。Rhについては、回収率の補正を行うことで初めて信頼のおけるデータを得ることが出来た。
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