研究概要 |
大強度相対論的電子ビーム(以下IREBと略す)からの新しい電磁波放射機構として超短パルス電磁波放射機構がロシア科学アカデミー応用物理学研究所のN.S.Ginzburg氏によって提案され,超放射と名付けられた.本研究室とGinzburg氏等との超放射に関する共同研究の中で,新たにビームのエネルギー・電流波形の時間的発展を制御することで,超放射の放射効率が増大するとの理論的予想を得た.本研究では,IREBの波形整形技術の開発と超放射出力の増大を試みた.波形整形装置と共鳴管製作に有利で,超放射機構の実験例のない低周波のSバンド後進波型共鳴管を使用した.まず,超放射を検証するため,共鳴管を設計・製作し,パラメーターの最適化等の改良を重ねた結果,出力約300MW,周波数5GHz,パルス巾5ns,発生モードTMO1の超放射理論で期待された電磁波の発生を得た.この電磁波の強度は世界的に見ても上位に位置する.一方,IREB波形整形については,冷陰極放電に伴う電極部プラズマの制御による整形は不可能であるため,IREB伝播容器途中に空洞を挿入して波形整形することを試みた.その結果,エネルギー波形は同軸空洞で,電流波形は大口径空洞を用いて整形することに成功した.空洞に入射する波形の影響が大きく変化の程度は限定されるが,簡便な方式でIREB波形の時間的変化を制御できる.最後に,波形整形されたIREBを用いて,電磁波放射実験を行った結果,出力に関して約2割程度の上昇を得た.空洞を通過する際に速度成分比が変化し,上昇率が低かったと考えられる.この結果,以下の点が明らかになった.IREBのエネルギー・電流波形の時間的変化を制御することにより超放射出力は増大する.今後は後進波管を用いた超放射の出力に対するビームの速度成分比の影響を理論的に検討することが必要である.
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