本年度は光導波路型のレーザー分光技術を用いて、プラズマー誘電体表面相互作用を観測するために、下記のように具体的に研究を進めた。 1)誘電体表面に光導波路を形成するために、結晶板を240度のリン酸溶液中でプロトン交換し、400度で熱アニーリング処理をする。その光導波路両端にプリズムを圧着し、レーザーで光導波路特性を測定し、最適製作条件を明らかにした。 2)作成した光導波路付結晶板と通常のスライドガラスを対向型バリアー電極とするため両板の裏面に透明電極ITOを蒸着し、バリアー放電装置を製作した。このバリアー放電装置を除振台上の真空チェンバー内の位置微動台上に設置した。 3)真空チェンバー内のバリアー放電装置をArガスで放電させ、チェンバーの窓を通して高安定波長制御可能半導体レーザーを入射させ、プリズムを介してバリアー放電光導波路に沿って伝播させた。このとき導波路上の光近接場は表面のAr準安定励起原子によって吸収を受ける。レーザーの波長を掃引して吸収分光を行った結果、S/Nは悪いが準安定励起準位からの吸収スペクトルがこの方式で始めて確認できた。有効放電長が7mmのとき、中心周波数での吸収量は約0.7%であった。 測定の可能性が明確になったので、今後はS/N改善のために有効放電長の増加を行い、さらに詳しい定量的計測を行う予定である。さらには、光導波路を伝播する光近接場と誘電体表面に垂直入射した透過レーザー光を用いた光近接場型クロスビーム吸収分光や導波路による増感効果の実験を行い、励起種の表面近傍ダイナミックスの研究を行う。
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