近年、核融合ダイバータプラズマにおいてダイバータ板の熱負荷を軽減させる非接触プラズマが注目を集めている。非接触プラズマにおいて、再結合プラズマに特徴的な水素原子の発光線が観測されており、再結合過程が重要であることは間違いない。しかし、プラズマ温度が数eVであるため、通常のプロトンと電子の輻射再結合・3体再結合に加えて分子が関与した再結合も重要であると考えられている。本研究の目的は、(1)申請者の、"振動状態を考慮した水素分子衝突輻射モデル"および"輻射輸送の計算手法"を中性粒子輸送コードに組み込み、(2)それを実験に適用して、プラズマ中での分子活性再結合がプロトンと電子の輻射再結合・3体再結合より優勢であるかどうかを検証することである。 今年度は、計算では、まず、振動状態を考慮した衝突輻射モデルを用いて、分子活性再結合を含む、水素原子・分子の生成・消滅など各種反応速度係数を計算した。さらに、LHDプラズマを対象として、これまで我々が構築していた1次元モンテカルロ中性粒子輸送コードを3次元化し、各種反応速度係数を組み込んだ。水素分子の電子基底状態のv=0-14の振動状態ポピュレーションは緩和時間が長いため、通常衝突輻射モデルで用いられる準定常近似を用いることが出来ない。このためモデルでは、それらのv=0-14を15種類の別種の粒子として扱った。プラズマ周辺部の電子温度・密度の計測データが乏しいため、現在、実験で得られた水素原子発光線強度分布を再現する電子温度・密度の分布を模索中である。 一方、我々の信州大高周波プラズマの形状は円柱状で軸対称のため、分光計測・プローブ計測による発光線強度・電子温度・密度の空間分布の計測が比較的簡単である。今年度、可視および真空紫外領域で水素原子・分子発光線強度の計測を行った。これらのデータを解析するためのモンテカルロ輸送コードを構築中であり、輻射輸送についても、申請者が開発済みの"励起準位ポピュレーションと輻射場強度を同時に収束計算により求める計算法"を輸送コードに組み込む作業を進めている。申請者のモデルにより分光データが合理的に解釈できるかどうかの検証を行うつもりである。
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