研究概要 |
非接触プラズマでは分子活性再結合過程H_2(v)+H^+->H_2^+(v)+H, H_2^+(v)+e->H+H*が重要とされている。我々はこの反応速度係数が水素分子の振動状態により1桁程度変化することを見いだしており、この過程を含む種々の水素原子・分子過程を考慮した3次元モンテカルロ中性粒子輸送コードを開発した。モデル中では水素分子振動状態(v=0-14)が区別されている。今年度、プラズマ中の水素原子の速度分布の詳細な計算を行い、ゼーマン分離も考慮し、LHDの分光実験で観測される水素原子バルマーα線の発光プロファイルを計算で再現することを試みた。水素分子から水素原子が生成される経路は数多くある。遠度分布の計算では、そのうち重要と考えられる15の経路について、生成される原子の速度分布を始状態の分子振動状態を区別して計算し、モンテカルロシミュレーションコードに組み込んだ。現段階では、だいたいの一致は見られるものの、構造の大きさなどにいくらかの不一致がある。 我々はさらに次のような手順で輻射輸送の効果を組み込んだ計算コードを構築し、信州大高周波水素放電プラズマに適用した。 (1)微小セルに分割し、各場所にイオン密度n_<H+>、電子密度n_e、電子温度T_eを与え、さらに、中性粒子輸送コードの計算結果から、原子スペクトルプロファイルg(ν)、基底状態水素原子密度n(1)を与える。 (2)初めに輻射輸送を考慮せず、各場所の励起準位ポピュレーションを計算する。(3)(2)から各場所の光の放出と吸収を計算し、光強度の空間分布を計算する。(4)(3)の光強度を用いて、光吸収を考慮して各場所の励起準位ポピュレーションを計算する。(5)このような計算を各場所の光強度と励起準位ポピュレーションが収束するまで繰り返す。 輻射輸送や各種反応により生成される励起水素原子ポピュレーションを計算したところ、例えば主量子数3の励起原子の主な生成過程はL_β線の吸収およびH+e->H*,H2+e->H*であり、それらが概ね同程度となった。計算で得られた主量子数3の全励起原子ポピュレーションは、発光線強度から得られた励起水素原子ポピュレーションと比べ若干大きな値となったがほぼ同程度の値となった。
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