研究概要 |
我々は、以前より、水素原子・分子衝突輻射モデルの開発を進めている。これらによる分子活性再結合の実効的速度係数の計算では、水素分子の振動状態により実効的速度係数が1桁以上変化することを見いだした。実際のプラズマ中での分子活性再結合の定量的評価には、プラズマ中の水素分子の振動状態ポピュレーション分布を知る必要があるため、我々はさらに、分子活性再結合を含む種々の反応を考慮した中性粒子輸送コードを開発した。そのコード中、水素分子の異なる振動状態を区別して別粒子として扱い、振動状態ポピュレーション分布が計算できるようにした。 今年度、組込まれている分子活性再結合過程の反応速度係数が振動状態だけでなく回転状態にも大きく依存するため、様々な回転状態を持っ分子の割合を回転温度として計算機コードに与えることができるようにした。さらに、この回転温度を与えるために、上記のモデルとは独立に、水素分子真空紫外発光線、Lyman帯及びWerner帯の解析コードを構築した。水素分子発光線解析モデルは、励起分子が電子基底状態からの電子衝突励起によってのみつくられ、自然放出遷移で電子基底状態へ戻るコロナモデルとした。 水素分子真空紫外発光線解析モデルを信州大学高周波水素プラズマに適用した。放電条件は、ガス圧{0.005,0.02[torr]}、放電出力{200,400,600,800[W]}とした。水素分子真空紫外発光線の計測を行い、また、ダブルプローブ法によりコロナモデルに与える電子温度・密度のデータを計測した。モデルによる解析の結果、回転温度は、およそ400〜500[K]程度となることがわかった。また同時に得られた振動温度は4000〜5000[K]程度で、中性粒子輸送コードによる振動励起分布の計算から求められる振動温度よりも2倍程度大きくなることがわかった。
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