1)無重力・無対流状態のガスアークで合成される炭素クラスター(単層炭素ナノチューブ)の発生過程および拡散過程について、受動的ミー散乱法を用いて時間記録した。これまでに無い実験と見ている。無重力状態では発生微粒子は等方的に非常にゆっくり拡散する。ランダムな動きや渦の様な動きもみられ、その動きは5mm/s以下に見えた。この条件はクラスターの効率合成に有利と思う。一方、通常重力下では直ちに定常対流が形成され、発生微粒子はその流れに乗っている。流れの速さは約0.5m/s程度であった。 2)直径約500nmの微粒子は、アークプラズマ炎の外側約1cmの所ですでに発生している。ここでは温度が1万℃から1000℃まで急激に下がる領域である。つまり、予想通り温度が1000℃に下がる部分でクラスターが合成され、その外側でのクラスター反応は起きないと言える。通常のアーク合成においても、クラスター合成が行われているのはアーク炎周囲の狭い領域のみであると明言できる。 3)合成すすからナノチューブを精製する方法として高電圧印加のスリットを落下させる実験を行った。その結果、不定形炭素を加熱除去できる結果を得た。何%まで除去できるか実験を行っている。通常直径1nm、長さ0.01-0.1mmのナノチューブが30w%程度の含有率で合成される。熱酸化処理、酸反応処理によって精製ができる。この高電圧加熱処理も有望と思う。 4)粉状ナノチューブ試料を加工し、ペレット形状にすることができた。この試料をプラズマ処理することができた。また、物理的安定性を得ることができた。圧縮強度は得られたが引っ張り強度は劣っていた。 5)ナノチューブのガスアーク放電において超音波を印可し合成過程に乱れを与えた。超音波印可においても良質のナノチューブが合成でき、収量が上昇する結果を得た。
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