研究概要 |
本研究は,(a)トロイダル四重極RFトラップ(主半径40mm,電極間隔9mm)中に閉じこめたCaイオンの回折格子安定化半導体レーザー(397nm光と866nm光)を用いたレーザー冷却を行ない,クーロン結合係数Γ>1の強結合プラズマを実現し,多数個イオンによる一成分強結合プラズマの,特に液体状態における統計力学的特性を明らかにする,(b)トロイダルトラップのトーラス方向ポテンシャルを制御することによって冷却されたイオンのトーラス方向への加速を行ない,トロイダル流を駆動する,の2つを目的として行なった. 397nm光は,外部共振器中に非線形結晶(LBO)を設置し,半導体レーザーからの794nm光の2倍高調波として発生させた.397nm光の波長送引は,外部共振器長を変え,外部共振器から半導体レーザーへの戻り光の位相と回折格子の角度で決まるレーザー波長を,それぞれ1f・3fフィードバックによって最適値に自動制御することによって行なった.397nm光のレーザー誘起蛍光(LIF)計測によって閉込めイオン計測を行なった. これまでの片側接地四重極RFトラップでは,トラップのチャージアップに起因すると思われる残留電場の影響で,高周波電圧V_<RF>やイオン生成用電子銃電流I_bの狭い領域でのみイオンが閉じこめられていた.中点接地方式への改良を行ない,バッファガス冷却されたCaイオンからのLIF信号を計測した結果,この残留電場の問題が解消されV_<RF>やI_bの広い領域にわたって閉じこめが可能となり,トラップポテンシャルの非調和項による閉込めの劣化現象である非線形共鳴が観測された.イオン閉込め時間τを計測した結果,レーザー冷却の行なわれるバッファガスのない高真空ではτが短く,冷却のためのレーザー波長送引時にイオンが無くなってしまうことが分った。レーザー冷却には,さらなるトラップの改良が必要である.
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