研究概要 |
フロロカーボンプラズマを用いたSiO_2/Si選択エッチングは半導体製造における基本的なプロセスのひとつであるが、従来エッチングにおいてフロロカーボン分子は表面反応に寄与しないと考えられてきた。しかし、近年のプロセスガス研究の発展に伴い、従来のフロロカーボン分子と異なった複雑な構造をもつC_5F_8等の多原子分子フロロカーボンガスがエッチングに供されるようになっている。我々は、このような分子はそのものが表面反応に寄与しプロセスに影響を及ぼす可能性に着目して、本研究に着手した。 前年度において、C_5F_8の表面反応性を調べるためSiO_2表面にAr^+を照射して表面欠陥を形成した場合と形成しない場合において、その後のC_5F_8表面吸着を調べた。その結果、C_5F_8の表面反応はAr^+照射のみの際に起こることを確認した。本年度は、Ar^+とCF_4,C_4F_8,C_5F_8などのフロロカーボン分子の同時照射において、高Ar^+エネルギー条件下でAr^+/フロロカー分分子フラックス比を変化させてエッチングイールドの評価をおこなった。そしてC_5F_8/Ar^+同時照射では、フラックス比〜1においてSiO_2エッチングイールド2.5という高いイールドが得られることを明らかにした。またC_5F_8フラックス比増加にともないイールドの減少がみられたが、XPSによる表面分析によりこれはSiO_2表面へのフロロカーボン膜堆積によるものと推定された。 さらにビーム実験によって得られた結果をもとに実エッチング条件におけるフロロカーボン分子の寄与について評価をおこなった。実エッチング条件において知られているイオンフラックス、ラジカルフラックスデータおよびビーム実験によって得られたイールド値をもとにC_4F_8などの分子がエッチングに寄与する割合を評価したところ、C_4F_8分子のエッチングイールドへの寄与は最大で30%近くまでになることを指摘した。
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