研究概要 |
使用した電子サイクロトロン共鳴(ECR)イオン源は2.45GHzの周波数を用いた多価イオン源である.ECR共鳴領域はミラー磁場の中央部である.マイクロ波(周波数2.45GHz)は導波管から同軸に変換して真空容器内へロッドアンテナで径方向から給電している.最大電力は1.3kWである.固体金属ソースはイオン引き出し電極と対向するミラーエンドからECR共鳴領域に向ってミラー軸上に沿って挿入して設置した.金属ソースとしてはまず複数の輻射損失を抑えるシールドを伴った坩堝を用いた.ヒーターはTaを使用し,高温部分の絶縁材にはガス放出が少ないpBNを,他の絶縁部分には焼結したBNやアルミナを用いた.生成されたイオンは10kVの電圧で引き出しイオンビームを形成した.イオン電流の分析はセクター電磁石を用いて質量/価数分離して,その後ファラデーカップにより捕集した.純鉄パウダー(99.998%)を坩堝に入れ,鉄多価イオンの生成を試みた結果,10価までのFe多価イオンの引き出しに成功した.動作ガス圧とマイクロ波電力を最適化し,長時間のビーム使用に耐え得るようにECR放電の安定化を図った.生成された多価イオンビームは静電レンズや偏向マグネットなどによってイオンビーム照射部に導き,プロファイル等を調べた.そして金属多価イオン発生,及び利用できる多価イオンビーム収量等に関して総合的な最適実験条件について調べた.また次年度にむけて更なる多価イオン電流増収を考えるために特定のモードの共振器となり,かつ共鳴領域で電界強度が強く効率の良いECRプラズマとなるような磁石位置,終端形状を最適化した真空容器を引き出し電極とともに考慮して設計指針を立てた.また新たな金属ソースの設計指針も同時に立てた.尚,金属イオンを注入すべきTiO_2薄膜のサンプルをイオン源と独立な装置によって作製し,それらの薄膜の結晶性・光触媒性と実験条件の対応関係を調べて,次年度の注入実験の基礎データの取得を行った.
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