研究概要 |
LHD磁場配位を用いた水素・棚素核融合炉に関する研究を行い,以下のような成果を得た。 1.LHD磁場におけるICRF加熱に電子による減速効果を取り入れて詳細に計算機解析した。現行のLHDでも水素・硼素核融合反応に関わる600keV超のプロトンを生成できることを確認した。 2.LHD磁場中でICRF加熱されたプロトンの定常分布関数が準線形平坦分布になることを指摘した。この時の水素・硼素核融合反応率を求め,プロトンの実効温度が300keV,プラズマ閉じ込め性能nτが10**22sec/m**3を超えれば点火条件が満たされることを示した。 3.LHD磁気面を取り囲むカオス磁力線領域での荷電分離は直ちに中和されること,カオス磁力線領域を離脱した磁力線は1.5m〜2mという短距離で真空容器壁に固定されていることから,LHD磁場は高ベータプラズマを保持できることを指摘した。さらにプラズマへの加熱入力が一定の閾値を越せば完全ベータ=1保持配位へ自発転移できることを理論的に導いた。 4.断面が任意の多角形の有限の太さを持つコイルの磁場計算公式を導き,更に磁気島を有するヘリカルトーラスのMHD平衡を一般磁気座標との関連において論じた。 5.磁場を2成分のベクトルポテンシァルで表しマクスウェル方程式をHIDMコードで計算する電磁波伝搬解析の新手法を確立した。導体表面の近接場の高精度数値計算が可能になり,幅広アンテナを用いる遠隔ICRF加熱手法を提案した。更に複素空間に拡張した光線追跡法で、アンテナ前面の近接場波動から放射される光線を追跡する手法を開発しその有効性を確認した。 6.プラズマ中の電磁波伝搬を解析するためにマクスウェル方程式と誘起電流に対する運動方程式をFDTD法で数値計算するシミュレーションコードに新たに波・粒子共鳴相互作用効果を取り入れた。これを用いて電子サイクロトロン共鳴加熱の解析を行った。今後はイオンサイクロトロン加熱を取扱えるようにコード拡張を進める。
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