研究課題
研究最終年度は、一重項酸素O_2(^1Δ_g)とラジカルの間で生成する電子スピン分極(CIDEP)の大きさとラジカルの化学的性質との関連についての研究を行い、活性酸素をスピン分極でプローブする方法を考える際に必要な基礎知識の総括に重点を置いた。O_2(^1Δ_g)とラジカルの衝突で生じる電子スピン分極の大きさについて、用いるラジカルとしてニトロキシド、ガルビノキシル、フェルダジルなど様々なタイプの化学種を検討し、各々についてその大きさをパルスESR法や時間分解ESR法で測定したところ、ニトロキシド≒500P、ニトロニルニトロキシド≒200Pガルビノキシル≒1P、DPPHやフェルダジル≪1P(ただし、Pは熱分布での電子スピン分極)と大きく異なった。このことより、一重項酸素寿命の測定感度について電子スピン分極の観点からは、ニトロキシド類がプローブとして極めて優れていることが示された。また、電子スピン分極の大きさを定量的な理論に基づいて検討した。電子スピン分極の大きさは、ラジカルと酸素分子の衝突対における交換相互作用の大きさに依存するため、各々のラジカル-酸素の系で交換相互作用が異なることが示唆された。その原因として、(1)分子間電荷移動、(2)不対電子軌道SOMOの大きさ、の2点について定量的考察を進めた結果、O_2-ラジカル間の交換相互作用の大きさがラジカルのSOMO軌道の広がりに依存することが結論された。TEMPOやニトロニルニトロキシドでは交換相互作用は少なくとも0.1cm^<-1>より大きく、他のラジカルは0.05cm^<-1>より小さくなると推測した。より優れた一重項酸素のプローブとしては、SOMO軌道が小さなラジカルをデザインすることが重要であるという結論を得た。
すべて 2006 2005
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Physical Chemistry Chemical Physics 8
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Journal of Photochemistry and Photobiology A : Chemistry (掲載予定)
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