研究概要 |
昨年度の研究により,当研究の目的を実現するには計算機シミュレーションに加えて,^<14>Nオーバートーン磁化成分の時間発展を表す解析的近似式が必要であるということがわかった.今年度前半は約半年かけて,目的の解析的近似式を導くことを試みた.その際,平均ハミルトニアン理論とダイソン級数を用いた.その結果目的の^<14>Nオーバートーン磁化成分の時間発展を表す解析的近似式が求まった.そこから次のことが明らかになった.1.多結晶の^<14>Nオーバートーン磁化の横成分は個々の微結晶のオーバートーン磁化横成分の総和であるが,個々の微結晶の横成分の方向が横平面上で放射状に分布しており,横成分の総和が非常に小さな値となる.2.しかしながら,個々の微結晶の磁気モーメントも横平面上で放射状に方向を持って分布しているため,観測される磁気モーメントの総和(即ち横磁化)は平均化されないで観測可能な値を持つ.3.これらの結果は半整数スピンを持つ四極子核のオーバートーンNMRにもあてはまる.よって半整数スピンのオーバートーンNMR観測も可能である. 今年度後半は,昨年度終わりから始めたDAS NMRプローブの試料回転軸切り替えシステムの構築を行った.しかしながら,回転周波数が5kHzを超えると回転軸切り替えがうまく働かないという問題が露わになった.本研究の目的のためには10kHzを越える回転周波数が必要である.現在,試料回転軸を切り替えシステムの各部分に様々な改良を加えているが,解決には至っていない.この問題の解決のために来年度は試料を入れるロータ自体を小さくすることを試みる予定である.
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