研究概要 |
(1)PEM駆動装置の改良を行った. フェーズロックドループ(PLL)を用いたPEM駆動装置で採用している水晶発振子を用いた電圧制御発振回路(VCXO)は,周波数安定度は優れているが,発振周波数の可変範囲が原理的に狭く,0.5〜1%であることが欠点である.PEMの共振周波数は,ほぼ水晶振動子の固有共振周波数で決まるが,0.1mm単位で長さに僅かな差があるために数100Hz程度の範囲内に分布する.そのためにPEMヘッドを交換すると発振しなくなることが起こる.本研究のPEM駆動装置で用いているVCXOは,PEM駆動周波数を直接発振させていない.4.9152MHzの水晶発振子を発振させ,プリセッタブルカウンタIC(74HC161)2つで構成される1/49分周器で分周した後,D-フリップフロップIC(74HC74)で矩形波に整形し,1/98分周器として動作させて高い安定度でPEM駆動周波数を得ていた.そこで,76HC161の分周比をディジタルスイッチで設定できるようにし,種々の発振周波数を持つ水晶発振子をVCXO基板のソケットに差し換えることによって,PEMヘッドを交換しても安定に発振するように改良できた.また,VCXOの水晶発振子には等価回路の容量比C_0/C_1が300程度以下と小さく,かつ品質管理の良いものを用いないと安定に発振しないことが分かった. (2)厚さの薄いPEMヘッドを製作した. 日本電波工業(株)に-18.5°X-cutの水晶振動子の製作を依頼した.縦横が1.90cm×5.08cmで厚さが2,3,4mmの振動子を人工水晶のZ領域から製作したものであり,Q値の最も高い最高グレード品IEC60758 Grade Aaである.信越石英(株)から購入した石英ガラス(Suprasil-P10)と組み合わせて製作したPEMのR値は低く,動的残留ひずみが非常に小さいと期待される.
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