研究概要 |
(1)DNAの固体表面への吸着過程の研究 固体DNAフィルムのCD測定の基礎研究として,DNAの固体表面への吸着過程を調べた.DNAやタンパク質といった生体関連高分子の立体構造が,その高分子の生体内における機能発現に深く関与しているため,生体関連高分子の立体構造の変化を知ることは非常に重要である.そこで,DNAが固体表面へ吸着する際の立体構造の変化についての過渡的な情報を得ることを目指した.CD測定を用いて,DNAの固体表面への吸着過程をin situで調べた結果,DNAの立体構造は,DNAが吸着する際に速やかに起こる変化と吸着後に起こる再構築の変化の2段階で起こっていることを解明した.また,色素がDNAに相互作用することにより生ずる誘起CDを用いて,DNAの吸着過程の立体構造変化を調べた結果,DNAは吸着する際に色素との相互作用を解消するような立体構造へと変化していることを解明した. (2)固体CD測定によるポリ(ε-リジン)(ε-PL)の構造評価の研究 微生物由来の生分解性高分子であるε-PLの固体状態での立体構造を,CD測定を用いて評価した,ε-PLは,放線菌の一種Streptomyces albulusの培養濾液から単離された塩基性ポリアミノ酸である.ε-PLの機能性材料への応用を考えるとき,固体状態での高次構造解析は重要である.artifactを除去する手法を用いて,様々なpHの水溶液からキャストしたフィルムの固体CD測定を行った.酸性pHでは溶液状態とほぼ同じCDスペクトルが得られ,静電的に広がったコンフォメーションであることを見出した.一方,塩基性pHでは,結晶相はβ-シート構造をとり,非晶相ではα-ヘリックスに類似した構造への再配列が起きた可能性があることを見出した.
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