研究概要 |
X-バンド領域で金属を放電加工により矩形導波管形状にくりぬく形で磁場モード共振器を試作した。試作共振器の性能を調べたところ、Q値が非常に低いことが分かった。これは、くりぬき作業で作られた表面では、平滑度が不十分で共振器の性能を落としていると判断した。また、電場モードおよび磁場モード共振器を個別に作ると、電磁界強度のキャリブレーションが困難になることが予想された。そこで、くりぬきにより共振器を制作するのを中止し、最大表面積を持つ面を、別個に平滑化した板で閉じる形にし、試料位置により電場と磁場モードを切り替えられる様にデザインを変更した。現在、新デザインで共振器を制作中である。 電場モード共振器の実用が遅れたので、測定対象となる、ラジカルイオン対の生成する反応と反応環境について先に検討を行った。いくつかの試料について測定を試みたところ、感度は低いものの、均一溶液中で、テトラフェニルポルフィリン-2-メチル-1,4-ナフトキノン系、キサントン-N,N-ジエチルアニリン系などの電子移動反応において、過渡光吸収検出磁気共鳴スペクトルの測定ができた。今後、感度向上を図り、電場モード共振器で測定を試みる予定である。 共同研究により、有機エレクトロルミネセンス(EL)素子内での、拡散によるラジカル陽イオン-陰イオンの再結合発光に対する、発光検出磁気共鳴スペクトルの測定に成功した。今後、想定していた溶液反応だけでなく、固体内過程においてもマイクロ波電場の効果の測定を試みる予定である。
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