X-バンド矩形共振器の最大面を平滑銀板で覆う、両モード共振器が完成し、性能試験を行った。マイクロ波吸収性のメチルナフトキノンのドデシル硫酸ナトリウムミセル水溶液を用いても共振が明確に観測され、磁場モードでの共振周波数は9.295GHz、電場モードでの共振周波数は8.960GHzであった。同試料に対し、磁場モードでマイクロ波を照射しつつ磁場掃引を行う収量検出磁気共鳴測定と、共鳴磁場でマイクロ波照射時刻を変化させるパルスシフト測定を行い、信号が得られることを確認した。電場モードで、マイクロ波発信器の10mW級の出力を用い同様の測定を行ったところ、信号が変化しないことを確認した。次いで、TWT増幅器を用いてkW級まで増幅して測定を試みたが、共振器内での放電などの危険な現象は起きなかった。磁場掃引スペクトルと、パルスシフト測定を行ったが、この電場強度でもノイズレベルを超える明確な効果は見られなかった。一方、試料溶液はマイクロ波照射により発泡し易くなっており、最低限マイクロ波による加熱効果があることが認められるので、測定感度を向上すれば、差異が認められると考えている。 電子移動反応をなるたけマイクロ波を吸収しにくい低誘電率の溶媒で行えるよう、ポリビニルカルバゾールと電子受容体による光誘起電子移動反応を検討し、最適な電子受容体、溶媒、濃度などを決定した。 有機エレクトロルミネセンス(EL)素子の輝度の磁場依存性の測定を進め、イオン対生成時の一重項収率を決定したほか、磁場効果に試料に印加された静電場の効果があること、輝度に共鳴マイクロ波振動磁場の効果があることを確認した。
|