研究概要 |
ラジカル対の反応過程は、個々のラジカルの電子スピン共鳴を起こす電磁波を照射すると、その磁場成分の寄与によりその後の反応が変化する。一方、電場と磁場の作用を比較すると、前者の効果が圧倒的に多いのが普通である。従って、ラジカルイオン対の反応に電磁波を照射した場合、両者の寄与が期待できる。これは社会的に注目されている、電磁波の化学作用に対する研究例でもある。そこで、反応試料に電磁波のうちの磁揚成分、電場成分を別々に作用させることが可能な共振器を開発し、同共振器を用いて観測を行った。中性ラジカル対を生成する2-メチル-1,4-ナフトキノン/ドデシル硫酸ナトリウムミセル系では、磁場成分の効果については従来通りの結果が得られることを確認した状況で、検出できるほどの電場成分の効果は見いだされなかった。ラジカルイオン対を生成する、10-メチルフェノチアジン/1,4-ジシアノベンゼン系の反応については、磁場とは関係なく、極めて強いマイクロ波照射下において2%ほど、散逸ラジカルの消失が遅くなるのが認められた。 ラジカルイオン対の生成法として、初期スピン状態がランダムであるラジカルイオン対を生成する、有機EL素子の発光過程を検討した。その結果、発光強度に明確な磁場依存性があることが見いだされた。その磁揚依存性から、蛍光型EL材料では、高電圧駆動の状態では一重項からの直接発光より、三重項励起子の衝突による遅延蛍光の寄与の方が大きくなることが見いだされた。また、共鳴マイクロ波の照射により発光強度が減少し、この発光過程に電磁波の磁場成分が影響を与えることが確認された。
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