研究概要 |
1.アルケンとTs-N=S=Oの反応を利用した1,2-チアゼチジン合成の一般性の検証 以前に見いだしたアルケンとTs-N=S=Oの[2+2]環化付加反応と引き続き行う還元反応を用いる1,2-チアゼチジンの合成法の一般性を検証するため、2'-アダマンチリデン-9-ベンゾノルボルネニリデン(1)を出発アルケンとして反応を検討した。1にTs-N=S=Oを塩化メチレン中40℃で反応させると1,2-チアゼチジン1-イミド(2)、アジリジン(3)およびチイラン(4)がそれぞれ52、6、1%の収率で得られ、1が34%の収率で回収された。反応温度を上昇させると、2の収率と1の回収率は低下し、3の収率は向上した。沸騰1,2-ジクロロエタン中の反応では、3と4が78と2%の収率で得られ、2と1の生成は確認できなかった。3が生成する原因を探るために検討を行い、2が熱のみでは少ししか3に分解しないが、Ts-N=S=OあるいはTsNH_2存在下では分解が加速されることがわかった。1,2-チアゼチジンを得るために、2の還元反応を検討した。THF中、室温で2とSmI_2を反応させると3が生成した。また、TiCl_4と亜鉛より調製した低原子価チタンを用いて2を還元したが、-40℃で反応を行っても3が生成するのみであった。一方、9,9'-ビベンゾノルボルネニリデンとTs-N=S=Oより調製した1,2-チアゼチジンを低原子価チタンで還元した後、シリカゲルカラムで精製すると1,2-チアゼチジンが得られた。 2.チイラン1-オキシドとLewis酸の反応 1,2-オキサチエタンを合成することを目的に9,9'-ビベンゾノルボルネニリデンスルホキシドにTMSOTfを反応させた。望む環拡大反応は進行しなかったが、anti,anti-スルホキシド5では室温8日間の反応でピナコール転位が進行しケトンを生成した。anti,syn-スルホキシド6の反応は5に比べ遅く同条件下で10%の反応進行が確認された。syn,syn-スルホキシド7では反応の進行は認められなかった。
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