研究概要 |
セレナゾールおよびセレナジンに各種置換基を付与するため、我々が合成法を開発した種々のセレン導入試薬を用いて、合成を試み、いくつかの成果を得た。さらに、それらの一部では生物活性も検討した。また、新しいシクロブテン誘導体の合成法を見出した。 1.セレナゾール、セレナジン類の新規合成 合成試薬として、我々が簡便な合成法を開発したセレノアミド、セレノ尿素、セレナアザジエン等を原料とし、種々の標的化合物を合成した。セレノ尿素から各種の置換基を付与したセレナゾール、セレナジン類の新規合成法を開発した。また、セレノアミド、あるいはセレノ尿素から誘導したセレナアザジエンからも新しい種々の標的化合物の合成に成功した。また、それらの生成は再環化反応をしていることなど、それらの反応についても詳細に検討した。α位に活性なメチレン基を持つセレノアミドは通常のセレノアミドと異なる反応をする。すなわち、α,β-不飽和ケトンとの反応では予想されたセレナジンを与えなく、セレニンを与えることも見出した。その結果については今年の化学会で報告したが、今後さらに深く検討の予定である。これら合成したセレナゾール、セレナジンの生物活性についても検討し、いくつかの高活性体を見出した。 2.インセレノラートを用いる環状化合物の合成 インセレノラートとα,β-不飽和ケトンとの反応では、当初、ジヒドロセレノフェンの生成を予想していたが、生成物のX線構造解析から、四員環化合物であるシクロブテン誘導体が生成することがわかった。これらの反応は活性官能基であるヘテロクムレン、クムレンを経由することを明らかにした。さらに、インセレノラートの誘導体である2-アルケニルエチニルセレニドからはアレニルセレノケテンを経由してシクロブテン誘導体を与えることも見出した。さらに、これらの結果を踏まえ、セレン原子を含む小員環化合物の合成へと展開している。
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