タンタル種を用いた3成分アミノ化反応 本研究ではタンタルの高いルイス酸性に着目し、カルボニル化合物などよりも求電子性の低いイミンに対する、アリルタンタル活性種の反応性を検討した。その結果、高いイミン選択性をもつことが明らかとなり、今までにほとんど行われていない不活性な脂肪族イミンや、不安定なイミンなどのアリル化が可能であることが分かった。 (1)イミンとアルデヒドとの競争反応 イミンとアルデヒドとを共存させて反応を試みたところ、イミンが選択的にアリル化され、ホモアリルアミンが89%収率で得られ、アルデヒドは未反応で全て回収された。重ジクロロメタン中にイミンとアルデヒドさらにTaCl_5を等モルずつ加え、^<13>C-NMRのケミカルシフトの変化を測定した。すると、カルボニル基の炭素のピークのシフトは+0.03ppmであるのに対して、イミノ基の炭素ピークは+0.57ppmのシフトとなり、タンタルがイミンに対してより強く配位していることがわかった。この結果より、アリルタンタル種はイミンに特異的に作用したと思われる。すなわち本反応系においての選択性は、タンタルに対する窒素原子と酸素原子との相互作用の違いが鍵になっていると考えられる。 (2)脂肪族イミンとの反応 脂肪族イミンのアリル化反応は、その求電子性の低さからほとんど例がない。本反応系においてもベンジリデンメチルアミンを用いると23%と低収率に終わったが、興味あることに、MgOを加えることによって収率が大幅に増加した。MgOを加えないとき基質は完全に消費されていることから、MgOは副反応を押さえる働きがあると考えている。 (3)アミン、アルデヒド、アリルトリブチルスズからなる三成分反応 脂肪族アルデヒド由来のイミンは一般に単離が困難であることが知られている。そこで、アミンとアルデヒドからイミンを系中で発生させてアリル化する手法を試みた。その結果、イミンのアリル化物が選択的に得られた。また、アリルスズに代えてクロチルトリブチルスズを用いたところ、γ付加体が96%収率で高立体選択的に得られた。
|