研究概要 |
電子注入に対応してスピン状態を変換する単分子磁気機能デバイスを創製するための基礎研究を行った。段階的酸化還元に対応して磁性を変換する=スイッチング機能を持つ有機分子を考案し、量子化学計算によりその妥当性を検証し,実際に合成することを目的とした。段階的な一電子還元が可能な分子系にスピン部分をつなげる事により、目的どおりの段階的酸化還元過程に対応したスピン整列を行わせ、基底スピン多重度を変換する磁気機能分子ができるものと考えた。酸化還元を受け持つ分子構造としてp-キノンを持ち,その両端に,共役した二つのニトロニルニトロキシドラジカルを持つ化合物を最終目的物とした。 ジラジカルである2,5-ビス(4,4,5,5-テトラメチルイミダゾリン-2-イル)-1,4-ジメトキシベンゼンおよび2′,5′-ジメトキシ-4,4″-ビス(4,4,5,5-テトラメチルイミダゾリン-2-イル)-p-テルフェニルは,各々のジアルデヒドを2,3-ジアミノ-1,4-ジメチルブタンと縮合した後,m-クロロ過安息香酸次いでNaIO4により酸化することで赤紫結晶として得た。前者の結晶構造も解析した。最終目的物への変換は今後の課題として継続する。 目的分子および関連するジラジカルについて量子化学計算も行った。1重項,および3重項各々について,密度汎関数法を用いて,構造の最適化とスピン状態間のエネルギー差を求めた。計算は,本研究費で購入したワークステーション上でGaussian03を用いて行った。
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