研究概要 |
本研究は、CIEEL型化学発光基質の新規トリガリングシステムの開発を目的とするものである。すなわち脱保護あるいは塩基処理により容易に生成するアリールチオラートアニオン(aryl-S^-)およびアリールメチル型カルバニオン(aryl-C^-)を電子供与体とする新しいタイプのCIEEL活性ジオキセタンの設計と合成を行い、新しいトリガリングシステムによる発光系を構築し、トリガリングシステムの分子認識への展開、そして新奇発光系の生化学分析への応用のみならず、よく知られた有機化学反応を新奇発光系を通して動的に観測しようとするものである。本研究の準備段階において種々のCIEEL活性ジオキセタンを合成し、極めて熱安定性に優れる1-アリール-2,6,7-トリオキサビシクロ[3.2.0]ヘプタン骨格を見出し、すでにその合成法も確立している。さらに、1位に様々なフェノール性芳香環を導入し、そのジオキセタンの熱安定性、発光特性に及ぼす影響を調べ、数多くの知見を得ている。これらに加えて、その発展としてフェニル環に置換スルファニル(RS-)および電子吸引性基の置換したメチル基(Ew-CH-X)を導入したジオキセタンが安定に合成できることをすでに確認している。ここではフェニル環に置換スルファニル(RS-)基を導入したジオキセタンに関し生化学分析への応用を視野に入れ、水系溶媒中での発光特性について検討した。単純なフェノール環を有するジオキセタンにおいてはその発光量子収率が非プロトン性有機溶媒系に比べ水系では激減する(1/39000)ことが知られているが、置換スルファニル(RS-)基を導入したジオキセタンでは1/10程度の低下しか認められなかった。また有機反応を発光系に組み込む新たな発光系の構築としてα-アリールアクリロニトリル型の置換基を導入したジオキセタンを合成、マイケル付加反応等を発光系に組み込みその発光特性を調べた。
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